保佐とは、精神上の障がい(認知症、知的障がい、精神障がいなど)により、判断能力が著しく不十分な方を保護・支援するための制度です。
判断能力が著しく不十分な状態とは、例えば
・日常の買い物程度は自分で出来るが、重要な財産行為は自分では適切に行うことができず、常に他人の援助を受ける必要がある(誰かに代わってやってもらう必要がある)人。
・いわゆる「まだら呆け」(ある事柄はよく分かるが、他のことは全く分からない人と、日によって普通の日と認知症の症状等が出る日がある人の両方を含む)の中で、重度の人。
をいいます。
この制度を利用すると、お金を借りたり、保証人となったり、不動産を売買するなど法律で定められた一定の行為について、家庭裁判所が選任した保佐人の同意を得ることが必要になります。
保佐人の同意を得ないでした行為については、本人または保佐人が後から取り消すことができます。
ただし、自己決定権の尊重の観点から、日用品の購入など「日常生活に関する行為」については、保佐人の同意は必要なく、取り消しの対象にもなりません。
また、家庭裁判所の審判によって、保佐人の同意権・取消権の範囲を広げたり、特定の法律行為について保佐人に代理権を与えることもできます。
保佐開始の事例
本人は1年前かに夫を亡くしてから一人暮らしをしていました。 以前から物忘れが見られましたが、最近症状が進み、買い物の際に1万円札を出したか5千円札を出したか、分からなくなることが多くなり、日常生活に支障が出てきたため、長男家族と同居することになりました。
隣県に住む長男は、本人が住んでいた自宅が老朽化しているため、この際自宅の土地、建物を売りたいと考えて、保佐開始の審判の申立てをし、併せて土地、建物を売却することについて代理権付与の審判の申立てをしました。
家庭裁判所の審理を経て、本人について保佐が開始され、長男が保佐人に選任されました。
長男は、家庭裁判所から居住用不動産の処分についての許可の審判を受け、本人の自宅を売却する手続きを進めました。