後見とは、精神上の障がい(認知症、知的障がい、精神障がいなど)により、判断能力が欠けているのが通常の状態にある方を保護・支援するための制度です。
判断能力が欠けているのが通常の状態とは、例えば、
・通常は、日常の買い物も自分では出来ず、誰かに代わってやってもらう必要がある人。
・ごく日常的な事柄(家族の名前、自分の居場所等)が分からなくなっている人。
・完全な植物状態(遷延性意識障害の状態)にある人
をいいます。
この制度を利用すると、家庭裁判所が選任した成年後見人が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人または成年後見人が、本人がした不利益な法律行為を後から取り消すことが出来ます。
ただし、自己決定権尊重の観点から、日用品の購入など、「日常生活に関する行為」については、取消しの対象になりません。
後見開始の事例
本人は5年前から物忘れがひどくなり、勤務先の直属の部下を見ても誰かわからなくなるなど、次第に社会生活を送ることができなくなりました。
日常生活においても、家族の判別がつかなくなり、その症状は重くなる一方で、回復の見込みはなく、2年前から入院しています。
ある日、本人の弟が突然事故死し、本人が弟の財産を相続することになりました。
弟には負債しか残されておらず、困った本人の妻が相続放棄のために、後見開始の審判を申し立てました。
家庭裁判所の審理を経て、本人について後見が開始され、夫の財産管理や身上監護をこれまで事実上担ってきた妻が成年後見人に選任され、妻は相続放棄の手続きをしました。