任意後見人のすることは、本人が自己の意思で必要と判断し、任意後見契約で委託した事務です。
このために任意後見人に与えた代理権は、代理権目録に記載され、これに記載されていない事項については、任意後見人は代理できません。
ただし、婚姻等身分関係で代理になじまないもの、本人の意思表示・同意・承諾等が必要な行為(医療同意、臓器移植の同意等)、強制を伴う行為(入院、施設入所等の強制)の同意については、後見人に代理権を与えることはできませんし、介護等の事実行為についても、代理権を付与することはできません。
代理権を与えることができる行為は、次のようなものであるとされ、これ以外の代理権の付与については、認められ難いとされています。
1、日常生活、社会生活、福祉に関する事項(生活用品の購入、電気、ガス料金等の支払い、介護サービスの利用契約、入院、医療契約、福祉関係施設への入所契約など)
2、財産の管理、保存、処分に関する事項(金銭管理、金融機関との取引、不動産の取引・管理、相続手続きなど)
3、司法手続き、公的機関に対する手続きに関する事項(行政機関が発行する証明書等の取得、税金の申告、訴訟行為など)
4、委任事務遂行に関する事項(複代理人の選任、証書類の保管・使用、事務処理費用の支払いなど)
なお、任意後見契約が発効しても、本人に意思能力があれば、本人が自ら法律行為を行うことができ、任意後見人には、本人が行った法律行為についての取消権はありません。