成年後見制度は、一般的には、判断能力のある人が、高齢になるにつれ、その判断能力が衰えてきた場合に利用される制度と思われがちです。
しかしながら、知的障がい、精神障がいなど、若いうち、もしかしたら幼いうちから判断能力が低い、もしくは無い人もいらっしゃいます。
高齢になってから、後見制度を利用される場合は、サポートしてくれる後見人等も、判断能力が衰えた本人の配偶者(妻や夫)や、子供たちにお願いすることができ、本人より後見人等が先に逝く心配は少ないですよね。
しかし、知的障がい、精神障がいなどの場合は、早い段階から判断能力についてのサポートが必要で、それはもっぱら、後見制度を利用する、しないに関わらず、本人より高齢である親が、本人をサポートすることになります。
ここで心配になるのは、その親が亡くなったあと、誰がその本人を引き続きサポートしてくれるのか、という問題です。
後見制度の利用で、この心配をできるだけ解消、もしくは軽減するにはどのようにすればよいのでしょうか。
ここでは、本来であれば、判断能力や意思能力が無いのであれば、その時点で後見制度の利用をするべきですが、そのような建前はさておき、親のサポートが適正に行われているなかで、将来に備えて成年後見制度を利用するという状況で考えてみます。
1、子が成人している場合で
ア)子に意思能力がある
子(後見人等が必要な本人)と、親以外の後見人候補者とで任意後見契約を結んでおく。
イ)子に意思能力がない
2、子が未成年の場合で
ア)子に意思能力がある
親の同意を得て、子と後見人候補者とで任意後見契約を結んでおく。
または、親が子を代理して、後見人候補者と後見契約を結んでおく。
イ)子に意思能力がない
親が子を代理して、後見人候補者と後見契約を結んでおく。
※成年後見で問題になるのは「判断能力」ですが、契約行為で問題になるのは「意思能力」となります。
任意後見は契約となりますので、契約行為ができるかどうかの意思能力の有無が重要になります。
意思能力は、判断能力の一部と理解されているので、判断能力を欠くからといって、意思能力を欠くかどうかは別問題になります。
何が違うんだと言われると、ちょっと困るのですが、専門用語をきちんと使うと、成年後見制度の利用の必要性は判断能力の有無、任意後見契約を自分でできるかどうかは意思能力の有無で考えなければならないということになっています。
いずれの方法をとるにせよ、親が生きているうちに、後見人候補者と親とで、子のサポートを開始しておき、親が亡くなった後の憂いを払しょくしておく必要があると思います。
また、任意後見では、任意後見を開始する前に、財産管理委任契約によって、財産の管理を後見人候補者に始めてもらっておくこともできますので、その利用も併せて検討します。
親と後見人候補者とで、共同で後見人をする、親が成年後見監督人になるなどのやり方も考えられますが、それは、子が成人している場合にしか検討できないと考えられます。
なぜなら、親が同意、代理をする場合は、親が子と親と両方の立場で契約をまとめてしまうことになり、それは法律上、認められないからです。
どうしてもそのようなやり方を取りたい場合は、特別代理人(任意後見契約の代理に関してのみの、親以外の代理人)に手伝ってもらうことについて、家庭裁判所に相談しておいてください。